【川上貴裕】落語の真髄から、教育を想う。
- By: Kyousaijuku
- カテゴリー: パフォーマンス力向上, 教育論
教採塾の川上です。
先日、浅草演芸ホールにて、落語を鑑賞してきました。
まず、噺家さんは、本当に、聴き手の惹きつけ方が素晴らしいと思います。
だからこそ、4時間半に渡る長丁場でも、ずっと集中して聴くことができました。
聴き手が飽きることなく、集中できる要素としては、やはり、間のとり方、テンポ・ピッチ、パフォーマンスによって、常に聴き手が「楽しい!」、「もっと聴きたい!」と思うからでしょう。
話が下手な人は、ペラペラと言いたいことを延々と、間をとらず、一定のテンポやピッチで話し続けます。
しかも、最悪なのは、言いたいことがまとまっていない場合。
まとまっておらず、考えながら話すからこそ、延々と長くなってしまいますし、「ここで笑わせよう。」、「ここで驚かせよう。」というような脚本化もできていないのです。
10言いたいことがあれば、10言ってしまうのです。
このような話し方をする人を、私は、「教養バカ」と呼んでいます。(後述)
要点が分からなければ、聴き手は苛立ちを覚えますし、色々と疑問が出てきて、考えるうちに、その時点で置いてけぼりされたようで、内容が頭に全く入ってこず、最終的には、聴くことすらやめてしまいます。
また、噺家さんは、導入から展開への繋げ方が、非常にスムーズでした。
導入で、関連するような小話をちょっと入れつつ、落語本体へと誘(いざな)います。
「話が難しい」というイメージから、落語を敬遠する方もいらっしゃると思いますが、実際は、全くもって、そのようなことはありません。
小話から展開までがスムーズなので、本当に理解しやすく、また、イメージもしやすいです。
イメージできるからこそ、言葉一つ一つ、情景一つ一つが、しっかりと頭に残ります。
それゆえ、落語の醍醐味であるオチで「なるほど!」と驚いたり、笑ったり、「一本取られた!」と納得したりできるのです。
下手な教師は、導入で、詰め込んだことを語りすぎることで、子供の考える力が身に付かなかったり、自分自身が授業を進めやすいように強引に流れを組んだり、「そもそも何が言いたいの?」と聴き手に感じさせたりします。
また、オチ=授業の落としどころ・要点を感じさせない導入なので、子供達にとっては、見通しが立ちません。
見通しが立たなければ、興味・意欲・関心・驚き・発見が無いので、その1時間の授業は苦痛以外の何ものでもありません。
最後に、噺家さんは、教養が素晴らしく、深いですね。
教養があると、引き出しも多いので、即興的な返答も、キレがあり、実に秀逸なものばかりでした。
教員志望者の中には、非常に教養が乏しい方がいらっしゃいます。
「よくそれで、子供に指導できるな!子供が可哀想!」と、思うほどです。
教員は、生徒指導や教科指導ももちろん大事ですが、何よりも、まずは、語りのプロでなければいけません。
そのために、興味のある分野・領域にとどまらず、教養を広げて、深めてほしいと、切に願います。
例えば、カフェで流れている曲を聴いて、「これは、シナトラの曲だな。」、映画を観ていて、「この描写は、物理のあの法則だな。」、新元号が、令和に決まった際に、「万葉集から引用」と聞いて、「日本最古の和歌集で、有名なものとして、○○と△△があるな。」というように、瞬時に、自然と思い浮かべることができるレベルであれば、「本当の教養人」と言えるでしょう。
いつも、教養と並んで言われるのは、知識ですね。
知識ももちろん重要ですが、どれだけ、知識を豊富にもっていても、いざ、その人の話を聴いてみると、「知識として知っているだけで、ストーリーになっていないな。」という場合があります。
今回、落語を聴きに行って、河野とも話したことは、「落語と聞いて、だいたいのイメージはつく、という人は多いだろうけど、果たして、どれくらいの教員志望者が、本当の落語を聴いたことがあるだろうか。観に行ったことがあるだろうか。本物に触れているのだろうか。」ということです。
本物に触れなければ、知識としては知っていても、話に深みが出ないので、追加でいろいろ聞くと、答えることができません。
また、思いついた順に、取ってつけて話すので、ストーリーになりません。
私は、2次試験満点講座で「小学校高学年が分かる言葉で話せ!」と、しつこく言っていますが、未だに、難解な言葉、どこかから引っ張ってきたような言葉を、並べている人がいます。
「それってどういうこと?」と聞くと、結局、言葉に詰まって、語れない人がいます。
これがまさに、知識をひけらかしていて、自滅してしまう、いわゆる「教養バカ」なのです。
「本当の教養人」というのは、たくさんの本物に触れていますので、幅広く・深い知識の中から、聴き手が興味のある話題を、上手に取り出すことができます。
聴き手がある程度知っている話題でさえも、「もっと聞かせてください!」とお願いしたくなるほど、惹き込まれます。
そのような語りができる人の周りには、いつも人だかりができていますし(話していて面白いから)、教採であれば、2次試験もすんなり合格していきます。
何度も2次試験で落ちる方は、もう一度、ご自身の胸に手を当てて、自問自答してみてください(笑)
もしかすると、気付かぬうちに、「教養バカ」になっているかも!?しれませんよ。
では、また来週!
川上貴裕