昨日は、いつものように6人の受講生のスカイプ講座を行いました。
スカイプ講座も、ものすごく熱のこもった講座になります。
インテリジェントでエレガントな中にも厳しい指導が入ります。
さて、昨日の6人のスカイプ講座の最初の人には、小論文の指導を行いました。
キャリア教育、学習意欲、いじめなどに関する小論文の指導でした。
この受講生さん、とても優秀な方なのですが、昨日の小論文は、ダメダメでした。
なぜ、ダメダメなのかというと、ありとあらゆることを自分で勝手にでっち上げて書いているのです。
例えば、
「いじめの原因はXXXだから、YYYしなければならない。」
「学習意欲はXXXで生み出されるから、YYYしなければならない。」
「キャリア教育とはXXXだから、YYYする必要がある。」
のように書き、XXXの部分は、根拠もデータも何もなく、すべて自分で決めつけているのです。知識も何もなく、すべて思い付きだけで断定して書いているのです。
科学論文ではありませんから、精密な証明は必要ありませんが、いじめの原因を言いたいのであれば、すくなくとも、文部科学省や教育委員会が公表している答申や通知、その他の文献を読んで、教育関係者が広く受け入れていることを言うべきでしょう。
学習意欲についても同じです。学習指導要領やその解説、あるいは、中教審の答申など、現在の教育で、学習意欲がどのように考えられているかを知った上で書く必要があります。
キャリア教育だって、文部科学省は定義を公表しています。教採的にはそれが定義です。もちろん、自分の意見を主張したいのであれば、「キャリア教育は一般には、~~~と定義されているが、私は、XXXの部分に特に注目したい。」と書けば、でっち上げにはならないでしょう。
要は、ろくに答申も学習指導要領もその他の重要文書も書籍も読まずに、何も勉強せずに、小論文なんか書くんじゃない!という話なのです。
すべて、自分の思いつきで書くような文章は、小論文とは言えません。小論文は感想文ではありません。小論文は学術論文ではありませんが、それでも、何らかの根拠や、一般に認められている考え方に立脚している必要があります。
何でもかんでも思いつきで、キャリア教育と聞けばこれを思いついた、とか、いじめと言えば、きっとこんな感じだろう、なんて調子で、小論文を書いてはいけません。あなたのちょっとした思いつきなど、どうでもよいのです。
そうではなくて、たとえば、「現在、いじめの対応策はこう言われているが、自分はこの部分を特に重視し、こんな取組を行っていきたいと考えている」のように書くと、ぐっと小論文らしくなりますよね。
小論文だって「論文」ですから、知識と教養がなければ書けません。これまで、どのような意見が言われ、現在、どのような意見が主流であり、自分はそれらの意見を踏まえた上で、どのようなことを考え、どのように実践していきたいのかを書かなければ、教採の小論文にはなりません。
自分以外の意見を一切学ばず、何の知識もなく、いきなり自分が思いついただけで、でっち上げた理屈からスタートしてもダメです。こういう知ったかぶり丸出しの文章は、1秒で読み手に嫌われます。
というような、厳しい指導をスカイプ上で展開しました。
そのレッスン内で、どんな質問でもどんな課題に対してでも、瞬時に的確な答申や通知や学習指導要領の該当箇所の該当ページをPDFで送信する私に、受講生は、「なんでそんなにピンポイントに文書が出せるのですか?」と聞いてきました。
わたしは、「プロだからだよ!」と答えました。
決して、カッコつけたわけではありません。プロならできなければいけないのです。それがプロなのです。知ったかぶりでも、知らないことを開き直るのでもなく、ある分野のプロは、その分野のことは、素人が驚くくらい知り尽くしていなければいけないのです。
と、ここまでは、普段通りの私だったのですが、昨日、5人目のスカイプ講座で、私が「知ったかぶり」をしてしまい、大いに反省することになりました。
5人目のスカイプ受講生は、音楽教師志望者でした。私は、音楽の専門家ではないので、ピアノも琴も弾けませんし、作曲も編曲もできません。でも、音楽の模擬授業を見て、合格水準かどうかは分かりますし、音楽教師志望者の面接も指導できます。オペラもクラッシック音楽も大好きなので、大抵の曲や作曲家については、かなりの知識がある「つもり」です。
でも、その「つもり」が大きな落とし穴でした。
昨日のスカイプ講座では、模擬授業の学習指導案と、最初の数分の導入部分の「授業台本」の演習でした。授業台本とは、授業で教師が話すことをそのまま台本のように書いたものです。
3本の模擬授業を演習したのですが、そのうちの1本は、「翼をください」という曲を使っての音楽の授業でした。受講生が設定した授業目標を簡単に言うと、「歌詞の意味に合わせた歌い方の工夫」というものでした。模擬授業の導入部分で、受講生は、「作詞者の意図を考えて、それに合わせて歌う」という意味のことを言い始めました。
私は、模擬授業後のコメントで、「作詞者の意図って何? 歌詞を読んで、その歌詞から読み取れる情景や感情をというのなら分かるけれど、作詞者の意図ってどうやって分かるの?作詞者の人物研究をしなければいけないの?作詞者がどんな人で、どんな時に、どんな風にこの詩を書いたかを知る必要があるの?この曲を歌うために?」とまくし立てました。
ここでやめておけばよかったのですが(笑)、私はさらに、「まあ、それがベートーベンやモーツアルトくらいの有名人なら、作曲者の意図を想像してみることにも興味・関心があるかもしれないけれど、『翼をください』の作詞者じゃねえ。。。そもそも、誰なんですか。『翼をください』の作詞者は?そんなことに興味持つわけないでしょ?」と言ってしまったのです。
そして、ご存じの方は、ご存じでしょう。「翼をください」の作詞者は、山上路夫(やまがみみちお)さん。現在もご存命の日本の歌謡曲界では、作詞の大家です。
山上さんが作詞した数多くの曲の中から代表作をほんのいくつか挙げてみましょう。
佐良直美さんが歌った「世界は二人のために」。
由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」。
小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」。
アグネス・チャンさんの「ひなげしの花」。
ゴダイゴ
の「ガンダーラ」。
梓みちよさんの「二人でお酒を」。
尾崎紀世彦さんの「めぐり逢い」。
GAROの「学生街の喫茶店」。
西郷輝彦さんの「ねがい」(時代劇、「江戸を斬る」の主題歌)。
テレサ・テンさんの「空港」。
ザ・ピーナッツの「情熱の砂漠」。
山本コウタローさんの「岬めぐり」。
他にも、
水戸黄門の主題歌の歌詞。
ハウスバーモントカレーのCMの主題歌の歌詞。
私は衝撃を受けました。これらの曲は、私が生まれてから今まで、ずっと聞いて育った曲です。すべて、カラオケで歌えます(笑)。いや、カラオケなしでもすべて歌えます(微笑)。
その作詞者が山上路夫さんです。そして、山上路夫さんは「翼をください」の作詞者でもあります。
私は、このことを知りませんでした。
そして、知ったかぶり満開で、「翼をください」の作詞者なんてどうでもいいじゃないか!と言わんばかりのことを口走ってしまいました。山上路夫さんのことを調べもせずにです。
このことを知って、私は直ちに、受講生さんに謝り、もう一度、模擬授業台本をよく読み直し、謙虚にしっかりとアドバイスさせていただきました。
私は、知ったかぶりをする人が大嫌いな分、自分が知ったかぶりをすることが許せないので、自分がそのような言動をしたときは、徹底して反省します。
昨日は、久しぶりにものすごく反省した日でした。
皆さん、知ったかぶりをしてはいけませんよ!!
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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