5月期の英語特訓講座で,大発見をしました。
なぜ,英語教師志望者は,英語の読解問題(長文の英文を読んで設問に答えるタイプ)に弱いのか。
なぜ,英語教師志望者は,英語の読解問題を解くのに,ものすごく時間がかかるのか?
なぜ,英語教師志望者は,英語の読解問題に苦手意識を感じるのか?
上記の質問への答えは,これまで,かなり謎でした。
英語教師志望者は,それなりに英語の実力があります。
英語教師志望者は,英語の語彙も文法も構文もかなり熟知しています。
でも,なぜ,英語の長文を読むのに困難を感じるのか,これが謎でした。
今回,壮大な実験も兼ねて,5月期の英語特訓講座で,読解のスピードを早め,読解の理解力を劇的に高め,読解への苦手意識をなくす方法にチャレンジしてみました。
答えは案外,簡単でした。
答えをズバリ言う前に,少し,説明してみましょう。
英語教師志望者は,英語を聞くときは,例えば,英語のスピーチを聞くときは,それなりに,理解して聞いています。
ある程度まとまった,英語の放送や解説,スピーチなどを聞いて,理解し,または,聞いた後で設問に答えるといったものには,かなりの精度で正解できています。
英語教師志望者の多くは,英語を聞いて理解することはできるのです。
でも,かなりまとまった分量の英語を読むことには,苦手意識を感じ,読むスピードが極端に遅く,また,理解の精度もかなり低いのです。
ここで,不思議に思われた方もいるかもしれません。
一般に,日本人の英語学習者(英語教師志望者も含めて),英語を読むのは得意だが,英語を聞いたり話したりするのが苦手だというステレオタイプな見方があります。
でも,このステレオタイプな見方は,英語教師志望者に関しては,必ずしも正しいものではないのです。
英語教師志望者は,かなりの分量の英語を聞いて理解することは,かなりできます。
でも,かなりの分量の英語の文章をよむことは不得意なのです。
なぜなのでしょう??
答えは次のようなものでした。
かなりまとまった英語の分量を聞くときには,英語の音声は流れて,英語の音声は,聞いた瞬間に消えていきます。
つまり,英語を聞くときには,英語を時間の流れで聞くしかありません。
聞き返すことも,ある部分をゆっくり聞くこともできません。
英語の音声の流れは,聞き手には,コントロールできません。
英語を聞くときは,話し手が(放送が)コントロールする英語の音声の流れに沿って,理解するしかありません。
そして,この場合,多くの英語教師志望者は,話されるている英語の内容を概ね正しく理解します。
ところが,かなりの分量の英語を読むときには,英語教師志望者たちは,文章の流れ(単語の流れ)で,英文を読んでいません。
これが主語で,これが述語でと分析し,
この部分がここを修飾していてと英文にアンダーラインを引いたり,
これが関係代名詞だから,こういう関係でと矢印を付けてみたり,
主語はどれだったかなと思い,読み返し,
挙句の果てに,日本語訳をあちこちに書いてみたり,
と,完全にdecoding(暗号解読)のように,読んでいるのです。
耳で聞いたときは,時間の流れの中で英語を聞いて,理解できていたのに,英文を読むという作業を始めた途端に,英語の流れで読むのではなく,主語と述語を見つけて,修飾関係を確認して,線を引いたり,訳を書いたりと,完全に暗号解読式に読んでいるのです。
これをし始めると膨大な時間がかかります。
これをし始めるといろいろな解釈の可能性が出てきたりして,いよいよ混乱します。
そして,日本語とは,違う英語の文の構造ばかりが目についてしまって,文章の内容・意味の理解が疎かになってきます。
これが,英語教師志望者が英語の長文を苦手とする最大の理由だったのです。
聞けば分かるのに,読めば分からなくなるという奇妙な現象が起こっていたのです。
英語の読解が苦手な理由がこれだと分かったら,この苦手な状況を克服するのは簡単です。
6時間あれば,克服できます。
6時間あれば,英語を聞くときと同じように,英語を読むことができるようになります。
要は,英語を,時間の流れの中で,理解することになれればいいだけなのです。
実は,この答えを私が見出すことができたのは,ある音楽教師志望者の言葉でした。
2週間前の,東京教採塾でのことでした。
一人の音楽教師志望者が,次のように言いました。
音楽は時間芸術である。
私は,時間芸術とはどういうことかと尋ねました。
すると,この音楽教師志望者は,次のように解説してくれました。
時間芸術とは,時間の流れで鑑賞する芸術です。
コンサートで交響曲やオペラを聞くときは,聴衆の都合で,楽曲を繰り返してもらったり,聞きたいところをゆっくり演奏してもらったりはできません。音楽は絵画鑑賞のように立ち止まって鑑賞することはできないのです。
私は,なるほど!と思いました。
確かに,私たちが,美術館で絵画を鑑賞するときは,どのように絵画を見るかは,私たちの自由です。ほんのチラ見でもいいでしょうし,その絵の前に2時間ほど座り込んで見つめることもできます。私たちが絵画や彫刻などを鑑賞するときには,時間の制約を受けません。私たちは,美術作品は時間の流れの中では鑑賞しません。
ところが,音楽は,演奏者が演奏する時間の流れの中でしか,鑑賞できません。
2時間のオペラは,誰が鑑賞しても,2時間の時間の流れの中でしか,鑑賞できません。
これと同じことが,英語理解にも起こっているようです。
英語教師志望者が,英語を聞くときは,時間の流れで聞いています。だから,繰り返して聞かずとも,主語と述語をことさら意識しなくとも,修飾関係を明確に確かめなくとも,言葉の流れで理解します。
しかし,いったん文字になると,時間の流れを無視して,分析と解読が始まります。
この分析と解読が,理解を鈍らせ,解釈をゆがめます。
絵画の鑑賞であれば,言語のような分析と解読は,少なくとも素人はしないでしょうから,時間の流れを無視した鑑賞は,なんのデメリットにもなりません。
しかし,英語の読解は,英語の流れ,言葉のフローを無視して,暗号解読としての分析と解読に専念し始めると,文章の意味,主張,ニュアンス,皮肉,文体などの理解度が急激に落ちていきます。
ですから,英文をいわば,「時間芸術」として,読み,鑑賞し,理解する演習が必要になってきます。
そして,これは,6時間ぶっ続けくらいで,簡単にできます。
英語教師志望者程度の英語力があれば,だれでも,この6時間で,英語の読解力が,「時間芸術」の視点で特訓すれば,すぐに英語の読解力が劇的に向上します。
やっと答えをみつけた!!
やっと指導方法を見出した!!
と,喜び,英語特訓講座の受講生たちからも,この6時間の特訓をやってください!と懇願されているのですが,残念ながら,今年度は時間がなさそうです。
7月の教員採用試験の1次試験(筆記試験)までに,私がこの6時間の特訓を開講できる時間が全く見当たりません。
もう定休日は返上しないと心に決めましたので(微笑),この6時間の特訓は,今年度は,封印ということになりそうです。
11月から始まる,新年度の講座では,是非とも,披露して,英語教師志望者の読解力を飛躍的に向上させることに,貢献していきたいと思っています!!
では,また明日!!
河野正夫
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