今日から、3部作で、
「人前で効果的に話せるようになるための語りの訓練とは何か??」
について、お話していきたいと思います。
今日は、「その1」です。
人前で効果的に話す、英語の用語で言えば、「パブリック・スピーキング」です。
日本では、人前で話すというときは、かなり儀式的に決まったことを話すということが多く、聞き手の耳と心に響かせ、相手の心を動かすという話し方をあまりしないことが多いですね。
小・中・高での授業中での発表などでも、子供たちは、どちらかというと、儀式的に、決められたパターンで、皆、同じような発表の仕方をすることが多いようです。
私たちが、世の中で名演説と言われている演説を聞くと、その語りには、情熱があり、聞く人を動かす力があります。
聞く人の記憶に残り、聞く人を一歩も二歩も前に踏み出させる力があります。
語りは、人の心に響き、人の心を動かさなければなりません。
語りの台本を書き上げていくことを、「スピーチ・ライティング」と呼びますが、このスピーチ・ライティングの手法を学ぶことは、語りの力を向上させるために大いに役立ちます。
スピーチ・ライティングには、様々な手法がありますが、今日は、その中でも、コピー・ライティングにも通用することをお話しましょう。
キャッチコピーを例にして考えてみます。
例えば、宅配運送会社が、
「私たちは、お客様の荷物を大切に運んでいます。」
と言っても、誰の心も動かせません。
宅配運送会社が、客の荷物を大切に運ぶのは当たり前のことです。
そんなことを威張っても何のプラスにもなりません。むしろ、そんなことを急に言い出したら、これまでは、ちゃんと扱っていなかったのかと疑われるかもしれません。
だから、クロネコヤマトさんは、CMのコマーシャルで、
「場所に運ぶんじゃない。人に運ぶんだ。」
というキャッチコピーを用いました。
これなら、クロネコヤマトさんの仕事への想い、荷物への想いが感じられます。
この言葉(キャッチ・コピー)なら、心に響き、共感を得ることができます。
このように、語りには切り口と工夫が必要です。
コミュニケーション学の言葉で言えば、「レトリック」が必要です。
ここでいう「レトリック」とは、単に言葉で飾るという意味ではありません。
人の心に響き、人の心を動かすための言葉の用い方・用いられ方を意味します。
同じ内容を表したい時でも、言葉を工夫することによって、聞き手への伝わり方がまったく違います。
言葉の工夫、視点の捉え方の工夫、切り口の工夫で、言葉は命を持ち、説得力を持ち、魔法の力さえ持ちます。
もう一つ例をあげますね。
私は、先日、今は亡き父の永代供養のお話で、お寺を訪れました。
私自身はクリスチャンで、お寺を訪れることは少ないので、少し、お寺を散策してみました。
すると、お寺の境内に、親鸞聖人の像がありました。
よく見ると台座に文章が彫られています。
これを読んで、なるほど!と思いました。
宗教的にではなく、コミュニケーション的にさすがだと思いました。
効果的なレトリックの文章だと思いました。
台座には、次のように書かれています。
ひとりゐて よろこばば
ふたりと 思ふべし
ふたりゐて よろこばば
みたりと 思ふべし
その一人は親鸞なり
意味は、簡単ですよね。
一人いて、喜ぶのであれば
2人いると思いなさい。
二人いて、喜ぶのであれば、
3人いると思いなさい。
その1人は親鸞なのだから。
なるほどねえ!と思いますよね。
まずは、一人で喜ぶのなら二人いると思え、二人で喜ぶのなら三人いると思えと、謎かけのように文章をお越し、その帰結として、その余分の一人は親鸞であると結んでいます。
なるほどね!とほくそ笑んでしまいますよね。
仏教徒であれ、クリスチャンであれ、レトリックの力には、感化されます。
クリスチャンの私も、この親鸞の言葉を読んで、納得・共感しました。
これもレトリックの好例です。
次回のブログ記事では、「人前で効果的に話せるようになるための語りの訓練とは何か??」の(その2)をお届けしますね!
お楽しみに!!
では、また明日!!
河野正夫
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