話し手が分かっていることを、そのまま話したのでは、聞き手には伝わりません。
聞き手がまったくそのことを知らない場合でも、明確かつ瞬時に伝わる伝え方をする必要があります。
例えば、日本の国旗、「ひのまる」を、全く知らない人に描いてもらうとします。言葉だけで、どう描くかを伝えるとします。
もし、あなたが、次のように言うのであれば、失格です。
「まず、長方形を書いて、その中に円を書いてください。そして、円を赤で塗ってください。」
上記の言い方では、話になりません。なぜなら、長方形といってもいろんな形の長方形があります。あなたにとっては、見慣れた「ひのまる」の長方形でも、知らない人にとっては、どんな長方形か分かりません。
また、円を赤で塗るというのは、円周を塗るのか、円の内側の空間を塗るのかも分かりません。
また、円を書くといっても、どこに書くのか、どのくらいの大きさの円を書くのかが分かりませんよね。あなたは毎日のように見ていて、円の大きさは自明でも、知らない人には分かりません。
このように、あなたは「ひのまる」を知っているから、「ひのまる」を思い浮かべながら、適当な指示を出しても、「ひのまる」を知らない人には、まったく通じません。
ですから、たとえ、概略であっても、次のように言う必要があります。
「まず、横長の長方形を書いてください。横と縦の辺の日は、3対2にしてください。(もちろん、フリーハンドですから、大体3対2で構いません。)そして、その長方形の中心を円の中心にして、円の直径がその長方形の縦の5分の3になるように円を書いてください。言い換えると、長方形の中心を円の中心にして、円を書くのですが、円の上に、縦の長さの5分の1の空間が余るように、また、円の下にも縦の長さの5分の1の空間が余るように円を書いてください。そして、円の内側を赤で塗ってください。」
上記の説明なら、聞き手は、必ず「ひのまる」と同じ形の絵を描くはずです。
こう言うと、そんな日の丸のサイズの詳細なんか知らない!という人もいるかもしれません。
いいですか!詳細が分からなければ、知らない人には伝えられないんですよ!!
もちろん、詳細というのは、性格に計測したり、設計図を見たりということだけを言っているのではありません。
分析的に見て、目分量で、計測するというのも入ります。
つまり、「ひのまる」なら、たとえ正式な仕様を知らなくても、目で見て、大体、横と縦の比が3対2くらい、円の直径が、長方形の縦の長さと比べてどのくらいという見当を付けておかなければ、人には伝えられません。
もちろん、正確な数値を知っておく、あるいは、調べることができるのであれば、それにこしたことはありません。
授業で言えば、これが教材研究です。
物事を知らなければ、人に(生徒に)伝えることなどできません。
「ひのまる」を知らない人に、「ひのまる」と同じ形の絵を書かせることができない人は、伝える力が不足している人です。
自分が知っているから、分かっているから、そのイメージだけで話しても、知らない人には通じません。
知らない人に、いかに分かりやすく、一義的に伝えることができるか、これも伝える力の大きな要素です。
最近、ネットで流れていた図形ですが、次の図形を、相手に見せずに、同じものを相手に書かせるには、どのように伝えたらいいでしょうか?
上記の「ひのまる」の例を参考にして、考えてみてください。
実際に3人くらいに同時に伝えて、3人が同じ図形を書かなかったら、あなたの伝える力は、かなり弱いということになりますよ!!
ご健闘を!!
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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