今日のブログ記事では、分かるように伝える、伝わるように伝える、効果的に伝えるとは、どういうことなのかの例を、少しだけ、ご紹介しますね。
伝えるとは、事実や情報を投げ渡すだけではありません。
伝えるとは、言葉によって(言葉以外の要素もありますが)、相手の心を動かし、相手を望ましい方向に導くことです。
伝えるとは、結局のところ、相手の心に響かなければ、意味がないのです。
典型的な例 その1
模擬授業(実際の授業でも同様です)で、次の2つの言い方のどちらが適切でしょうか?
「りょうた君、お正月と聞いて、思い出すものは何ですか?」
「お正月と聞いて、思い出すものは何ですか? りょうた君は何を思い出しますか?」
もちろん、後者が適切ですよね。
前者では、最初から、教師は、りょうた君に話しかけているので、他の生徒は、自分は答えなくてもいい、自分は考えなくてもいいと感じてしまい、質問について考えることを始めません。
しかし、後者であれば、質問が先なので、生徒は、まずは、質問について考え始めます。また、「りょうた君は、」と聞いているので、その後、自分たちも、聞かれる可能性があると思い、ここでも考えることをやめません。
要は、「りょうた君」という個別の生徒の名前を、質問の先にするか、後にするかで、これだけ、伝わり方、学級全体という聞き手の心を動かすかどうかが決まるということです。
典型的な例 その2
皆さんは、模擬授業や実際の授業で次のように話していませんか。
「この問題は、ちょっと難しいけど・・・」
「今日は、ちょっと難しいことを勉強しますが・・・」
これからやろうとすることを「難しい」と言ってしまうことで、生徒のやる気をそいでしまうことがあります。
仮に、あなたが数学が大の苦手だととして、数学の授業の始めに、数学の先生が、「今日の授業は難しいよ」と言うと、どう思うでしょうか?
おそらく、「じゃあ、自分は分からない。」、「難しいのなら、やる気なくなるなあ」と思うのではないでしょうか。
確かに、ヤーキーズ・ドットソンの法則にしたがえば、ある程度の難易度は、意欲の向上につながりますが、「難しいよ」と言うだけでは、ヤーキーズ・ドットソンの法則の効果も、ごく習熟度の高い生徒にしか通用しません。
多くの生徒にとっては、「難しい」という言葉は、学習意欲向上にはつながりません。
では、どう言えば良いのかというと、
「これからやる問題は、ちょっとした工夫ですぐに解けるよ。」
「今日の授業は、アイデアがひらめくと楽しくなるよ。」
「今日の問題は、スポーツやゲームなど趣味に強い人は、解きやすいかもしれないよ。」
といった、生徒の心をくすぐることをいうと意欲を高めることができます。
ヤーキーズ・ドットソンの法則を、ものすごく単純に応用してみると、
「1から100までの数字を5回ずつ書きなさい。」
という指示は、退屈で、何のためにそんなことをしなければいけないか分かりません。誰でもやろうと思えばできる単調でつまらない作業です。
しかし、
「この知恵の輪は、かなりハイレベルだけれど、はずせるかな。」
というと、ほとんどの生徒は夢中になって、はずそうとするでしょう。
要は、生徒を夢中にする、やる気にする、生徒の挑戦心をくすぐるような語りかけができているかどうかです。
典型的な例 その3
例えば、地理の授業で、
「さあ、ヨーロッパにはどんな国があるかなあ。言ってごらん。」
これでは、せいぜい、フランスとか、ドイツとか、イタリアとか、イギリスとか、そういったメジャーな国がいくつか出て終わりです。
そして、そんなメジャーな国は、ほとんど全員の生徒が知っていますから、ここでいくつかあげさせても知的な刺激にも、単元への導入にもなりません。
でも、
「ヨーロッパには、50の国があるのだけれど、みんな何個あげられるかな。30以上あげられたらスゴイよ。もし、50全部言えたら、みんなは外交官並だね!」
のように言えば、クラス全体で、絶対に30の国をあげていこう、あるいは、クラスによっては、パーフェクトの50を目指そうということになります。
大人だって、47の都道府県をいかに早く全部書き出すかという競争をすれば、結構、楽しいですよね。
要は、教師のアリバイ作りみたいな質問(発問)ではなく、生徒が本気で取り組むような質問(発問)をする必要があるということです。
たった3つの例でしたが、伝わる語りの典型例として、ご理解いただけたと思います。
こんなちょっとした工夫が何十・何百とあります。
伝わる語りを見に付けて、聞き手の心、生徒たちの心を動かしましょう!!
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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