ジョークとは言っても、私たちの言葉は使いようによっては、聞く人(読む人)にとんでもない誤解をさせることがあるという証拠にもなるものです。
では、そのジョークを。
私たちの周りには、DHMOという物質が存在します。
私たちは、この物質といつも隣り合わせて生きています。
この物質は、下に述べるような特徴を持っています。
しかし、どの国の政府もDHMOを禁止しようとはしていません。
DHMOとは、
・酸性雨の主な成分でもある。
・温室効果を引き起こす。
・重篤なやけどの原因となりうる。
・地形の侵食を引き起こす。
・多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせる。
・電気事故の原因となり、自動車のブレーキの効果を低下させる。
・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。
・その危険性に反して、DHMOは頻繁に用いられている。
・工業用の溶媒、冷却材として用いられる。
・原子力発電所で用いられる。
・発泡スチロールの製造に用いられる。
・防火剤として用いられる。
・各種の残酷な動物実験に用いられる。
・防虫剤の散布に用いられる。洗浄した後も産物はDHMOによる汚染状態のままである。
・各種のジャンクフードや、その他の食品に添加されている。
さらに、DHMOは、人間が吸引すると高い確率で死亡する。
どうでしょうか??
上で言われていることはすべて科学的な事実です。
ウソはありません。
こんな危険な物質が野放しになっているのです。
しかも、この物質を禁止しようという動きはありません。
なぜでしょうか??
はい。答えは、DHMOとは、「水(みず)」(water)のことです。
DHMOは、英語の”Dihydrogen Monoxide”(水素が二つで、酸素が一つの物質)ということです。
科学的な事実を述べているようで、まったく一方的な偏った事実ばかりを集めて、「水」の性格を誤解させようとしています。
日本語版ウィキペディアを見ると、同様なジョークとして、次のようなものが載っています。
「パンは危険な食べ物」ということを主張する語り。
・犯罪者の98%はパンを食べている。
・パンを日常的に食べて育った子供の約半数は、テストが平均点以下である。
・暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから24時間以内に起きている。
・パンは中毒症状を引き起こす。被験者に最初はパンと水を与え、後に水だけを与える実験をすると、2日もしないうちにパンを異常にほしがる。
・新生児にパンを与えると、のどをつまらせて苦しがる。
・18世紀、どの家も各自でパンを焼いていた頃、平均寿命は50歳だった。
すべて事実ですよね。
でも、このような事実の集め方・述べ方をするとパンが危険な食べ物に思えてきます。
上の2つがジョークになるのは、答えが「水」と「パン」で、私たちは、それらが危険な毒物ではないと知っているからです。
あまりよく知らない物質で、上記のように語られると、世にも恐ろしい毒物だと信じてしまいかねません。
恐ろしいのは、そういったコミュニケーション的なレトリックで、事実を大きく捻じ曲げてしまうこともできるということです。
コミュニケーション論の中では、レトリックは重要な地位を占めます。
レトリックとは、使い方によっては、恐ろしい結果も引き起こします。
レトリックは、上手く使って、正しく善い結果を導きたいものですね。
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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