文脈が読めなくなった人々は,本当に大切なものを見失っています。
- By: Kyousaijuku
- カテゴリー: 教育論
【教員採用試験のレトリカル戦略】
最近,面白い現象に気づかされるようになりました。
恐らく,昭和の時代にはあまりなく,平成,そして,令和になって,ものすごく増えてきた現象です。
それは,
文脈を読んで,判断することがされなくなっている
ということです。
言い換えると,
文字面に影響されやすく,文字の背後にある内容を考えない
ということになります。
日本人は,比較的,「空気を読む」とか,「行間を読む」とか,「察する」ということが得意な文化を持っていると言われてきましたが,最近では,そうではなくなってきているようです。
これに関しては,面白い例がいくつもあります。
例えば,私(河野)が,次のように言ったとします。
1次試験合格した皆さん,おめでとうございます!
2次試験も合格して,最終合格を勝ち取りましょう!
そのための講座を開講します!
そうすると,電話がかかってきます(笑)。
大阪では,2次試験の後では,3次試験もあります。3次試験にも対応しているのですか?
この電話をしてきた人は,もちろん,大阪では,全国ほとんどの自治体とは違って,教員採用試験が,1次試験,2次試験の2回制ではなく,3回制になっていて,大阪特有の2次試験という10分程度の面接が中間試験として間に挟まっていて,通常,他の自治体では,最終試験としての2次試験と呼ばれているものが,大阪だけでは,3次試験と呼ばれているということを知っています。
でも,私(河野)が全国に向けて,2次試験のための講座をします!と呼びかけると,大阪の3次試験には対応しているのですか?と心配になるようです。
なぜなのでしょう?
もし,私が,大阪の2次試験(中間試験)だけに特化しているのであれば,必ず,「大阪を受験する皆さん!」のように,対象が大阪であることを明記するはずです。
また,全国に向かって呼びかけて,2次試験に合格して最終合格を勝ち取りましょう!と言っていれば,大阪では3次試験のことだと分かるはずです。
でも,「2次試験」と私が言うと,不安で仕方がなくなるようです。
やはり,文字面に引っ張られて,文脈が読めないことが多いようですね。
他にもこういうのは,たくさんあります。
東京校・大阪校について,必ず,次の質問が来ます。
東京都の教採専用・大阪府(市)の教採専用ですよね?
なぜなのでしょう。
ホームページには,全国に対応とか,関東地方を中心とした各県とか,関西地方を中心とした各県などと明記しています。
でも,「東京校」・「大阪校」と聞くと,東京を受験するため・大阪を受験するためと勝手に考えてしまうのです。
東京にあるから東京校,大阪にあるから大阪校という地理的なものと考えらえなくなっています。
でも,これは,教員採用試験が原則として,都道府県ごとに行うからなんですよね。
もし,仮に,「品川校」・「新大阪校」だったら,品川区の学校の先生専用ですか?とか,新大阪駅周辺の先生専用ですか?という質問は,絶対に来ないでしょう。
受験自治体と校舎の名前が一致(東京校・東京都,大阪校・大阪府)しているので,東京校は,東京都用の対策をして,大阪校は大阪府用の対策をすると勝手に思い込んでしまいます。
こうなってくると,ホームページに全国に対応と明記してあっても,意味がなくなります。
東京校と聞いた瞬間に,東京都用の対策をするんだろうと機械的に思い込んでしまうのですよね。
他にも,例えば,
栃木県を受験するのですが,栃木県に対応していますか?
という質問が来ます。
私が,
栃木であれば,東京校が便利です。東京校は,関東地方を中心にして,全国の教員採用試験に対応しています。栃木県に対応していますか?とおっしゃいましたが,栃木県では,なにか他の都道府県にはないような特別な出題形式とか,特別に難しいとか,特別に学んでおくべきところがありますか?
と聞くと,
いえ,それは特にありません。
と答えます。
さらに,私が,
では,どういう趣旨のご質問ですか?
と聞くと,
「栃木県」という県名がなかったので,心配だったのです。
と答えます。
なるほど!と思いました。
東京校のホームページには,「東京校は東京で開講する関東甲信越に強い講座」と明記しているのですが,「栃木県」という県名が入っていないので,心配なんですね。
「栃木県」は,関東甲信越ではないかもしれない!ということなんですかね(微笑)。
つまりは,どこかのフレーズで,自分が受験する県名が出ていないと気が済まないのですよね。
気が済まないというか,自分が受験する県名がないと,講座内容の適格性を判断することができなくなってしまうのです。
だったら,そういう問い合わせをしてくる人は,自分だけの戦略を求めているかというと,それが,そうではないんです(笑)。
いったん講座を受講してしまうと,一般的なことだけを求めるようになります。
どの受験生でも勉強するような,一般的なこと以外は,勉強しないのです。
例えば,面接演習で,栃木県の志望理由を聞くと,
「恩師がいるから」
「自然が豊かだから」
と言います。
それって,栃木県に特化した回答か!とツッコミを入れたくなります(笑)。
問合せ段階では,あれだけ,栃木県にこだわったのに,実際に,講座に入って,都道府県ごとに特色ある回答を求めるようなときになったら,なぜか,全国汎用的に平凡なことを言ってしまうのです(笑)。
あの時の,栃木愛はどこに行ったんだ?と思うのですが,本人は,いたって真剣なのです(笑)。
これも,ご本人が悪いとか,栃木愛があるとかないとかではなく,要は,問い合わせのときは,「東京校」とか「関東甲信越」という言葉に,「栃木県」という言葉が入っていなかったので,文脈を読めずに,心配になって聞いたということだけなのです。
文脈が読めないということは,もちろん,良いことではないのですが。。。
あっ,栃木県を例にしたのは,偶然です(笑)。
ふと,昔の例を思い出しただけです。
私(河野)は,栃木県,大好きですよ!(微笑)
さて,上記のような話をしたのには,理由があります。
確かに,文脈が読めなくなったというのも,問題ではあるのですが,それよりも,深刻な問題があります。
それは,文脈が読めない人に最も典型的な現象は,
自分自身のためになるか?
という発想が皆無なのです。
どういうことかと言いますと,もう一度だけ,栃木を例に出させていただくと(微笑),栃木県に対応していますか?と言った人は,あくまでも,「栃木県の教採に対応していますか?」を聞いただけで,「栃木県のXX志望を,YYいう経歴・バックグラウンドで受験する私には意味がある講座でしょうか?」ということは聞いていないのです。
つまりは,興味がある特化は,せいぜい,都道府県どまりなのです。
文脈を読まなかったというよりも,こちらの方がはるかに問題です。
もし,私が,教員採用試験の受験者だったとして,受講したい講座を選んでいるとしたら,私が,聞く質問は,ずばり次のようなものです。
私は,XXという経歴を持っています。YYという能力があります。しかし,ZZという不利な点もあります。こんな私が教員採用試験に合格するための学びを,この講座ではできるでしょうか?
この問いへの答えによって,講座を受講するかどうかを決めるでしょう。
もし私が受験者だったら,私の受験者としての視点は,講座の所在地や講座のホームページ上の言葉にはありません。
受験者としての私の視点は,その講座が,私という人間を合格させることができるかという一点にあります。
私が受ける県とか,講座の所在地とか,そういうことではなく,この私が合格するために,有益な講座かということだけが私の視点です。
たとえ,その講座の合格率が99%だろうが,何百人の合格者を出していようと,この私(この経歴があり,この強みと,この弱みがある私)を合格させてもらえそうかということだけが,私の関心です。
そして,この視点・関心こそが,最大の文脈を読むということなのです。
私が,仮に,教採の受験者だったとして,どの講座のホームページを見ても,「河野正夫を合格させる講座」とは書いてありません!(笑)
当たり前ですよね。
もしかすると,ある講座は,「広島県に強い!」とか,「英語志望者に強い!」とかは書いてあるかもしれません。
でも,受験者個人名や,個人的な経歴で,その人に強い!と書いてあるはずがありません。
だからこそ,文脈を読まなければいけないのです。
どんな講座のホームページも,あなたを合格させるとは書いていません。
でも,その講座のホームページやブログなどの情報で,あなたが合格させてもらえそうかを読み取ること,これが,文脈を読むことなんですよね。
東京校は,栃木県にも対応しているか?
2次試験というのは,大阪の3次試験も含むのか?
という質問では,ダメなんです。
聞くべき質問は,
この私,こんな私,こんなバックグラウンドの私が,合格する方法を学べますか?
なんですよね。
そして,もちろん,こういう質問は,個人レッスンレベルですから,電話やメールで教えてもらうというわけにはいかないでしょう。
既に,具体的な戦略指導になってしまいます。
無料でお願いすることは,難しいでしょう。
ならば,その講座のホームページなり,ブログなり,その講座を教えている講師のツイッターなりで,その講師がどんな指導をしてくれそうかという「文脈」を読むことが重要ですよね。
でも,この「文脈」が読める人が,年ごとに減ってきています。
というか,この「文脈」が読める能力を持っているような人は,講座に来なくても,きっと,教採合格は,独力で勝ち取れる人なんでしょうけどね!(微笑)
では,また明日!!
河野正夫