人は文字で文章をまとめるとき、文字だけで考えがちです。
自分の想いを文字で言葉に表してみて、文字で読み返して、文字で納得できれば、それで良しとします。
文字で書いた文章のままで提出するものなら、これでもよいかもしれませんが、面接の語りのいわゆる「原稿」であれば、これでは、確実に失敗します。
面接の語りは、音声で伝えます。
その「原稿」が音声として話されたときに、聞き手に効果的に伝わるかどうかを綿密に検討しなければいけません。
面接の語りやスピーチを、文字だけを見つめて書いていると、それを耳で聞いたときに、とても分かりにくく、違和感いっぱいのものになりがちです。
また、文字で見れば、それこそ一目瞭然だけれども、音声で音だけで聞くと、ちょっとわかりにくい、また、時には、全然通じないという場合もたくさんあります。
例えば、次のような文の場合です。
「私は、教育は共育だと思っています。」
文字で書いて文字で読めば、すぐに分かりますが、これを音だけで聞くと、まず分かりません。
基本的に漢字で「遊べる」のは、文字言語だけです。音声言語では、無理なのです。
だから、文字で書く場合と、音声では、語りの内容を若干変える必要が生じることもあります。
また、少し工夫するだけで解決するようなものもあります。
例えば、
「あなたの座右の銘は何ですか?」
と聞かれて、音声だけで、
「臥薪嘗胆です。」
と答えたのでは、瞬時には聞き手に伝わらないかもしれません。
文字で「臥薪嘗胆」と読めば瞬時に理解できることが、「ガシンショウタン」と音で聞くと、「え??」とちょっと考えなければ分かりません。
確かに、聞き手(面接官)は、座右の銘を聞いているので、受験者が何か格言とかことわざのようなものを答えるという心の準備はできているでしょうが、「ガシンショウタンです。」といきなり言われると、「え??」と聞き直したくなります。
これが、例えば、「塵も積もれば山となる、です。」であれば、音声で聞いた瞬間に伝わります。
では、「臥薪嘗胆」をどうしても座右の銘として言いたい場合は、どうすればよいのでしょうか?
はい。答えは簡単です。
例えば、
「臥薪嘗胆という言葉です。」
と言えば、少し分かりやすくなります。
なぜかというと、「ガシンショウタンです。」だと、「ガシンショウタン」という音だけでは、「臥薪嘗胆」という言葉を瞬時に思い浮かべてもらえない可能性があります。でも、「ガシンショウタンという言葉です。」と言うことによって、聞き手に、「ガシンショウタンは、言葉なんだな。ああそうか、臥薪嘗胆か!!」と比較的スムーズに分かってもらえる可能性が高まります。
いきなり「ガシンショウタン」ではなく、「ガシンショウタンという言葉」というだけで、ガシンショウタンの意味する範囲を狭めて、すぐに臥薪嘗胆という言葉に到達させることができます。
こういう配慮をしながら、面接の「原稿」は書いて行く必要があります。
それでも、やはり人は、原稿を書くときは、どうして文字面だけをみて書いてしまいます。文字面がよければ、それで良しとします。
ですから、私は、面接の語りの「原稿」は原稿ではない。原稿と呼んではいけないといつも言っています。
原稿ではなく、台本だと呼びなさいと言っています。
そうなのです。面接の語りの準備をするのならば、原稿ではなく、台本を書かなければいけないのです。
台本とは、演劇やドラマや映画のセリフが詰まったものです。
もともと俳優に話してもらうことを前提として、書かれています。
台本は読むものではありません。話すものです。
台本を論文や随筆のように書いたのでは、きっと演劇やドラマにならないでしょう。
面接も同様です。
面接の語りを準備するなら、
原稿を書くな!!台本を書け!!
これが鉄則です。
面接で合格を勝ち取りたいと思っていらっしゃる皆さん、しっかりとした台本を書いてくださいね!!
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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