採用側も人間、受験者も人間です。
人間が人間を選ぶ時には、試験の点数だけ、願書の記載事項だけで決まるわけではありません。
人が人を選ぶ時に、大きなファクターになるのが、「共感するかどうか」です。
確かに、筆記試験の得点は高いにこしたことはありません。願書に記載できることも、できるだけインパクトがあり、実績がある方がよいでしょう。大学もブランド大学であれば、有利にもなるでしょう。
でも、私たち人間は、単なるテストの得点や、実績や、大学名だけでは、人に共感しません。
共感しなければ、その人を選ぼうとはしないものです。
人を共感させるにはどうすれば良いのか。人を共感させる条件とは何なのでしょうか。
少なくとも3つあります。
1. 語り手が、熱い「想い・志・信念」を持っている。
2. 語り手が、その人ならではのユニークなものを持っている。
3. 語り手が、伝えようとしていることが、聞き手の願いや望みに合致している。
まずは、熱い「想い・志・信念」です。これがなければ始まりません。
そうかと言って、いい加減なものではダメです。本当の心の中にある、想いや志や信念でなければなりません。受験用にでっち上げたものでは、すぐに見抜かれてしまいます。
多くの人が、ここで躓きます。多くの人が、ここを誤魔化します。
どうしても、受験用の作文になってしまいます。
でも、どんな人でも、想いはあります。志はあります。信念もあります。多くの場合、ただ、気付いていないだけです。
少なくとも教師になろうと思っている人は、心のどこかに何らかの熱い想い、志、信念があります。問題は、それを自分で見つけること、心から見つけ出すことです。
簡単そうに見えて、実は、これはなかなか難しいことです。
「あなたの想いは?」、「あなたの志は?」、「あなたの信念は?」と聞かれて、すぐに雄弁に答えられる人は、そう多くはありません。
だから、ここは対話式に引き出していくことが必要です。
私の場合、受講生と向き合い、いろいろと問答をします。話をします。時には、議論をします。その中で、その受講生が心の中に持っている、熱い想いや志や信念を見出していきます。
この営みを早い時期に、教採の半年以上前にやっておくことは教採合格のための必須要件と言ってもよいでしょう。
自分が強みだと思っていたことが実は単なる受験作文だったということはよくあります。
反対に、これまで気付いていなかったけれど、対話をしていて、自分の本当の想いや夢に気付いたということはしばしばあります。
この営みが有効なのは、特に、現役大学生さんと、不合格を重ねた年長の受験者です。
現役大学生さんは全員、年齢もほぼ同じ、バックグラウンドも大体似通っています。そこから自分の魅力を打ち出すためには、自分の熱い想いを発見することが重要になってきます。
これまで何度も不合格になった、あるいは、民間企業等から転職するやや年長の受験者の方も、自分の熱い想いを再認識し、再構築することで、合格への語りを創り上げることができます。
熱い「想い・志・信念」を見出すと言うことは、自分ならではのユニークさを確立するということに繋がります。
単なる受験作文では、その人なりのユニークさは出てきません。
せいぜい、
「子どもたちの笑顔のために」
「子どもの個性を伸ばす」
「故郷に恩返しをする」
といった、平凡かつ意味のないものになりがちです。
でも、自分自身の想いを発見できれば、自分ならではの語りができます。
私の面接指導は、ここに重点を置いています。
合格に値する、採用されるにふさわしい想いを言葉というカタチにすることが、面接演習の根本です。
そして、受験者が語る言葉が、聞き手(採用側)の想いや願いに合致しているということを確かなものにする戦略が必要です。
想いは一人一人に固有ですが、独りよがりなものでは、教採には合格しません。
採用側(面接官)の心を掴むためには、教育への適切な理解、教職への望まれる態度、子どもへの期待される愛情を示す必要があります。
そして、これは、かなり、知識と教養と教育観が必要とされます。
ここのところは、単なる想いの発露ではなく、熱い想いをいかに効果的に言葉というカタチにしていくかの戦略と戦術が必要です。
戦略と戦術とは言いましたが、基本となるのは、その受験者の想い・志・信念です。ウソをでっちあげるわけにはいきませんし、言葉だけを飾っても空虚です。
想いを言葉というカタチにするための戦略的・戦術的な作業こそ、面接演習の本体と言うことになります。
ですから、私は、面接演習では、受験者とよく語り合います。かなり突っ込んだ質問もします。ものすごくほめちぎったり、反対に、ものすごくダメダメ・コメントを差し上げたりします。
これは、集団講座でも同じです。
対話のない面接演習では、合格する語りを構築することはできません。
面接演習の本質は、単なる語りの添削ではありません。
面接演習の本質は、対話と戦略と戦術による「人を共感させる想いを見出し、想いを言葉にし、面接官の共感を勝ち取る」ための、創造的な営みです。
人が人を選ぶ時には、選ばれようと思う人は、選ばれるための語りを創っていかなければなりません。
そして、その語りの基となるのが、想い・志・信念です。
(画像は、ゲーテの言葉です。)
いつも面接で失敗してしまう人は、もう一度、このことを再認識して準備をすると、合格を勝ち取れますよ!!
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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