だから、教師は教育し続けるんですね!!(24年前の新米教師、河野正夫の思い出)

今から、24年前、私は、アメリカの公立高校の教諭でした。

私は、外国語科の中の日本語科を担当しました。

当時のその高校では、外国語科は、スペイン語、フランス語、ドイツ語、日本語がありました。

当然、その高校では、日本語科の教師は私一人。「外国人講師」という待遇ではなく、正教諭待遇をしてもらっていましたので、職員会議とか、保護者会とかにも出席し、各種委員会にも所属していました。

私の日本語のクラスには、ジョシュア君という高校1年生がいました。ジョシュア君は、発達障害を持っていました。アメリカでは、当時から、障害のある子どもも原則として、通常の学級で学ぶというシステムを取っていました。

ジョシュア君は、とても明るく、快活な生徒で、一見すると発達障害を持っているということは分かりません。

ただ、私は教科担当の教師として、彼の障害については、事前に情報提供は受けていました。

先にも述べたように、ジョシュア君は、とても明るく、快活な少年でした。授業を妨げることもほとんどなく、日本語の勉強も一生懸命やっているようでした。

でも、ときどき、ジョシュア君は、授業中に、歯磨きを始めたりします。
いきなり、歯ブラシを取り出して、歯を磨き始めます。

私が、

“Josh, what are you doing?”

と聞くと、笑顔いっぱいに、

“I am brushing my teeth.”

と正確に答えます(微笑)。

また、ある時は、授業中にいきなり、キャンドルを取り出して、ライターで火を付けました。

私が、

“What are you doing, Josh?”

と聞くと、やはり、満面の笑顔で、

“I am lighting my candle.”

と答えます。

私が、

“Why are you lighting your candle?”

と聞くと、

“Because it is beautiful.”

と答えます

ジョシュア君は、何を聞いても、直球勝負で答えます。
まったく、意地悪さや皮肉はありません。

でも、私が、

“OK, Josh. But, we are now studying Japanese in the classroom. So, perhaps, you want to do that after class or at home.”

というと、これまた笑顔で、やっていることをやめます。

純粋というか、純朴というか、明るくて、元気な生徒でした。

ある日のこと、私は、副校長に呼び出されました。

そして、ジョシュア君のIEP(個別の教育支援計画)のミーティングに出席してほしいと要請されました。

アメリカの個別の教育支援計画は、当該生徒、担当教師、校長(副校長)、そして、保護者の4者が出席したミーティングで立案することが求められています。

今回のミーティングは、ジョシュア君のIEPから、日本語の受講を外そうという提案がされていました。理由は、日本語学習は、ジョシュア君にとって負担となるのではないかということでした。

副校長が、日本語の受講を外してはどうかとジョシュア君と、ジョシュア君のお母さんに説明をしました。

私も、それがジョシュア君の最善の利益になるのであれば、特に反対はありませんでした。

ジョシュア君のお母さんも、やむをえないだろうという雰囲気でした。

そして、副校長がジョシュア君に、「今、説明したように、日本語の学習は大変だから、日本語のクラスをやめて、もっとほかの簡単な教科を選択したらどうだろう。ジョシュア君は、どう思う?」と聞きました、

ジョシュア君は、

“I want to keep studying Japanese.” (日本語の勉強を続けたい。)

と答えました。

すると、お母さんが、優しく、

“Why?”

とジョシュア君に聞きました。

ジョシュア君は、笑顔いっぱいの顔で、私を見ながら、

“Because I like your class.” (先生の授業が好きだから。)

と言いました。

お母さんは、それを聞くと、微笑みながら、副校長を見ました。

副校長も、笑顔でうなずいて、

“OK.”

と言いました。

結局、ジョシュア君は、日本語の授業を受講し続けることになりました。

IEPのミーティングのあと、副校長は、私に、

“Mr. Kohno, I am proud of you.”

と一言、言ってくれました。

でも、私は、副校長の褒め言葉は、ほとんど耳に入ってきていませんでした。

私の頭の中では、Joshua君の、

“Because I like your class.”

という言葉が何十回も何百回もこだましていました。

“I like your class.”(先生の授業が好き)というシンプルな言葉が、私を圧倒していました。

私は、大学院を修了して、教師1年目でした。

新米教師の私の情熱に火を付けたのは、ジョシュア君の言葉でした。

24年経った今でも、あの時の、ジョシュア君の言葉は、鮮明に頭に残っています。

それ以来、私は、すべての生徒、学生、受講生に、”I like your class.”と言ってもらえるような授業をすることに努めています。

学びは、楽しく、役に立ち、喜びに満ち溢れている必要がある、という私の信念は、ジョシュア君が教えてくれたのかもしれません。

では、また明日!!

広島教採塾
河野正夫

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