言葉の教育は、人類にとって極めて重要です!!

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1799年の今日(7月15日)、エジプトのロゼッタで大きな石のようなものが発見されました。

そうです。歴史で必ずといっていいほど習う、あの「ロゼッタストーン」です。

ロゼッタストーンの表面には、神聖文字(ヒエログリフ)、民衆文字(デモティック)、そして、ギリシャ語で文章が刻まれています。

この石を頼りに、フランスの古代エジプト学者、シャンポリオンが神聖文字を解読したという話は、多くの方がご存じでしょう。

でも、ここには、見落とされがちなとっても重要な事実があります。

それは、あのピラミッドやスフィンクスをつくり、強大な文明をつくったエジプトの言語である神聖文字が、1500年以上も、完全に忘れ去られ、誰も読むことができなかったということです。

読むことができなかったどころか、シャンポリオンが解読するまでは、そもそもヒエログリフという文字が意味を表す文字なのか、音を表す文字なのかさえ、忘れられていました。また、古代エジプトの文字だということは分かっていましたが、どんな言語を表しているのかもまったく見当がつかないという状態だったのです。

従って、シャンポリオンが解読するまでは、エジプトの古代遺跡や発掘品に書いてある神聖文字もただの「飾り」に過ぎませんでした。

シャンポリオンの解読後は、ヒエログリフと古代エジプト語の研究が一気に進み、遺跡や発掘品に書かれている莫大な文章が次々に読まれ、理解されていきました。

そこには、「死者の書」をはじめ、古代エジプト文明の文学、法律、記録、歴史、宗教など、驚くべき内容が書かれていました。古代エジプト文明の叡智がヒエログリフで、エジプトの遺跡の隅々にまで記されていたのです。

でも、それらの記録は、神聖文字の読み方が人々の記憶から忘れられ、古代エジプト語自体さえも忘れられる中で、1500年以上も、「飾り」以外の何物でもなくなりました。

皆さんもご存じのようにエジプトから人々が消えたわけではありません。エジプトは今でも存在しますし、8,000万人以上の人口を擁する大国です。

そして、古代エジプト文明は、おそらく、世界の古代文明の中で最も有名です。あのピラミッド群やスフィンクスは、古代史が好きな人は、誰でも憧れるでしょう。

しかし、現代エジプト人で、ヒエログリフが読め、古代エジプト語が理解でいる人は、考古学者などの研究者を除けば、誰もいません。現代エジプト人は、アラビア語を話し、アラビア文字を使っています。

言語は文化の基盤であり、我々の思考や思想の源泉ですが、エジプト人は、あの古代文明を築いた言語と文字を捨ててしまいました。

もちろん、これには、歴史的な理由があります。エジプトは2,300年以上前に、ギリシャ語を話すプトレマイオス朝の支配に入り、7世紀にはアラビア語を話すイスラム帝国の支配に入りました。

歴史的な理由はあるにせよ、エジプトの例は、言語と文字がいったん失われると、天才学者でも現れない限り、もはや元には戻らないことを、私たちに教えてくれます。

言語と文字は、いったん失われると、その言語と文字で記述されたいた文明、文化、宗教、法律、歴史、あらゆる記録を失います。私たちの過去が失われてしまうのです。

日本語の例で喩えてみましょう。

もし、日本人が日本語と日本の文字の知識を完全に忘れた、失ったと想像してみてください。

そこには、日本文学も日本史も、日本国憲法もありません。読めないのですから、何が書いてあるかは永遠に分からなくなります。

図書館という「遺跡」には、莫大な書物があるかもしれません。インターネットにも莫大な日本語によるデータは残っているでしょう。でも、日本語と日本の文字の知識が完全に失われたら、もはや誰も読むことはできません。日本の文化や歴史は、完全に失われてしまうのです。少なくとも、人間の心の中からは。

エジプトは、古代においても、現代においても、多くの人口を擁する大国です。少数民族などで言語が失われた例は、たくさんありますが、エジプトの古代文明ほど、隆盛を誇った文明がその言語と文字を完全に失ったという例はあまり多くはありません。

でも、エジプトで起こったことは、どこででも起こり得ます。

言語と文字を失えば、私たちは、その言語と文字で築いた過去の歴史を失います。恐ろしいことです。

過去にブログで、ローマ帝国の話を書きました。

こちらの記事です。「教育は何のためにあるの?」

ローマ帝国の例と同じく、古代エジプトも、言語と文字を失うことで、ピラミッドやスフィンクスを築いた文明の栄光は、1500年以上も忘れられていました。

言語や文字が失われるのに、どのくらいの時間がかかるでしょうか?

おそらく100年くらいあれば、ほぼ完全に失われるのではないでしょうか。

1億2千700万人の人口を擁する日本も、人ごとだと笑ってはいられないかもしれません。

もしかすると、1,500年後の日本において、誰か天才学者が、漢字やひらがなやカタカナを解読してくれるまで、「源氏物語」も「吾輩は猫である」も日本国憲法も教育基本法も、解読不能の古文書となって放置されてしまうかもしれません。

そうならないためにも、言葉を大切に守り育てるのは重要なことですよね。

1500年後の日本で、たとえ法隆寺や東大寺は残っていても、そこにある文書や文字が一切忘れられて、謎の象形文字に囲まれた遺跡といった風にはなってほしくないですよね。

言葉を守り育てることは、歴史を守り育てることである。
そして、それは、教育の使命でもある。

ロゼッタストーンが発見された今日、7月15日、そんな想いを強くしました。

では、また明日!!

追伸: 私は、20歳台後半の頃、古代エジプト語とヒエログリフを独学しました。文法書や参考書をたくさん買い込み、Gardnerが著した大都市の電話帳くらいある文法書を読みふけったりしました。一時は簡単な文章くらいなら読めていました。博物館での古代エジプト展などに行っても読める文章があったりしました。でも、あれから20年、私も古代エジプト語とヒエログリフを忘れてしまったようです(微笑)。

広島教採塾
河野正夫

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