今日のお昼は、そのイタリア人シェフによるイタリアン・ビュッフェでランチを楽しみました。数十種類以上のイタリア料理を思い切り堪能できました。また、シェフ自ら、眼の前でパスタを調理してくれました。
最高のイタリアンに舌鼓を打ちながらも、私は次のことを強く感じていました。
このイタリア人シェフは、料理が上手いだけではない。
コース全体のコーディネート、料理の組み合わせ、ビュッフェの豪華な配列にも綿密な計算と美学がある。
私は、このことに気づくと、その視点で料理の一品一品とその組み合わせ、全体としての美をあらためて見つめてみました。
やはり、そこには計算しつくされたグルメの美学がありました。
このシェフは、単に料理の腕が良いだけではなく、食事全体をコーディネートし、食事をひとつのイベントとしてお客に提供する力の持ち主でした。
このホテルにこの企画のために招かれたこのシェフは、きっと何週間もかけて、どんな料理にするのか、どんな料理を組み合わせるのか、どんな食材を使うのか、そして、それがビジネスとして成功しうるものなのかなどを綿密にプランニングしたのでしょう。
この意味では、そのシェフは、単なる腕のいい料理人ではなく、食のマネジメントにも長けた「食の経営者」なのでしょう。
こんなことを思っていて、ふと教師の仕事にも思いが至りました。
教師志望者の多くは、授業力や授業技術を付けようと奮闘しています。
授業力や授業技術を付けるための勉強会やサークルはたくさんあります。
でも、学級経営という側面はどうでしょうか?
学級経営をメインにやっている勉強会やサークルはとても少ないようですね。
学級経営の勉強会があったとして、「学級経営」と銘打っていても、その実際は、学級の集団作りや学級の雰囲気作りが勉強の中心になっていて、学級開きや生徒指導的な内容がほとんどなのではないでしょうか?
もっとマネジメント的な視点で、学級活動を子どもたちにどう提示するか、子どもたちをどう巻き込んでいくかを行事ごとに徹底して考究していくという視点は、あまり多くは見られないようですね。
例えば、
遠足プランニング論
修学旅行論
運動会コーディネート論、
文化祭実施演習
学級担任論
といった感じで、実践をまとめ、学問にまで高め、それを後進に指導していくというのは、まだまだ少ないと言えそうですね。
確かに、授業改善や教育活動の改善という視点で、PDCAサイクルを取り入れたりはしていますが、教育をマネジメントの視点で考えるというのは、教師の間では、あまり主流ではないのかもしれません。
もちろん、学校の教育活動には、「全体計画」や「年間指導計画」があります。この計画の立案がまさに、コーディネートやマネジメント、全体像を明らかにし、それに子どもたちをどう巻き込み、主役にしていくかということなのですが、残念ながら、こういった計画書の作成は、多くの教師の皆さんからは「雑務」だと思われている現状があります。
そうなのです。教師たちの多く、そして、教師志望者たちの多くは、実際に子どもを教えることや子どもと触れ合うことに重点を置くあまり、集団作りや生徒指導以外の「学級経営」や、授業経営、学校行事経営といったマネジメントやプランニングをおろそかにしているきらいがあるようですね。
どちらかというと、そういうマネジメントやプランニングは、校務分掌で回ってくる「雑務」だととらえて、嫌々ながらこなしているということが多いのではないでしょうか。
料理人に喩えて言えば、一つ一つの料理を作るのは楽しいし真剣にやるけれども、コース料理全体の企画をしたり、ビュッフェに並べる数十種類以上の料理の組み合わせやその配列を考えたりするのはあまりやりたくない、というのが多くの教師のメンタリティではないかと感じています。
もちろん、料理人が一品一品の料理を美味しく作ることができなければいけないように、教師も1時間1時間の授業を上手く指導し、一人一人の子どもと上手く向き合うことができなければいけません。でも、それだけでは、不十分なのです。
料理人が料理全体をコーディネートし、料理を食のイベントとして提供するように、教師もまた、学校教育の中で全体計画をコーディネートし、学級活動や学校行事などを、教育のイベントして子どもたちに魅力的な形で提供する能力が求められています。
教材研究や指導案作成は、料理で言えば、レシピ作りのようなものです。
実際の授業や指導は、料理で言えば、実際の調理のようなものです。
これらができることはもちろん重要ですが、でも、本物のシェフはその上をいきます。食事というイベントをコーディネートし、食の美学とハーモニーで食べる人を魅了します。
教師も教育活動をコーディネートし、教育活動の楽しさとやるべき価値で、子どもたちを夢中にさせる必要がありますよね。
そんなことを考えながら、20名限定の特別ディナーを堪能しました。
このディナーを食べることができたのは20名だけで、昨夜限りの食のイベントでした。
食を堪能しながら、実は、教育への想いを熱くしていたのでした。
では、また明日!!
広島教採塾
河野正夫
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