100を知って、5か10くらいを教えていますか?

模擬授業の指導をしていて気付くことがあります。

授業者(教採受験者)が授業で教えているのは、その人が知っていることの100%なのではないかということです。

例えば、第1次世界大戦について授業をするとします。導入・展開といろいろな事項を指導していきます。黒板には、第1次世界大戦に関するいろいろな事柄が書かれていきます。説明もなされていきます。

でも、そんなときに感じるのです。この授業者がいま話していること、いま板書していることは、この人が知っている知識や教養の全てなのでは?という疑問を。

私は、教師という職業は100知っている中の5か10くらいを生徒の習熟度や興味に応じて、厳選して、教えるものだと思っています。授業で説明しなかった、扱わなかったことが圧倒的に多くあるのが「教える」ことの土台だと考えています。

知識や教養を軽んじる教師は、「いっぱいいっぱい」の授業をします。前日くらいに大急ぎで、一夜漬けの教材研究をして、知識を仕入れます。それも、次の日の授業で使うのとほぼ量的に等しい知識だけを仕入れます。そして、その仕入れた知識を全部使って授業をします。授業そのものは上手くいくこともあるでしょう。でも、その授業をすべて理解した生徒の知識量と、その授業を教え終えた教師の知識量は同じなのです。その日の授業が終わったあと、生徒と教師の知識量が等しくなる、その程度の知識と教養で授業をする教師がかなり多いのです。

こんな教師は、応用が利きません。生徒がちょっと発展的な質問や、付随的な知識の質問をしてきたらお手上げです。生徒にその日の授業分野、例えば、戦国武将に関してマニアックな知識があったりすると、もうこの教師は、生徒が何を言っているかすら見当がつかなくなります。

要は、小学生レベルの知識を仕入れて小学生に授業を行い、中学生レベルの知識を仕入れて中学生に授業を行うという教師がかなりいます。高校教師になるとさらに深刻な場合があります。習熟度が高く、いわゆる有名難関大学の入試問題などを勉強している生徒のレベルにはまったく付いていけない高校教師はたくさんいます。

私は、決して、全ての教師に難関入試問題が解けるようになれと言っているのではありません。入試問題を解く指導など、教師にとっては副次的なものです。私が言っているのは、高校生を教える高校教師は、高校生に持つことが期待されているような知識くらいは、たとえそれが入試問題に出てくる知識であったとしても、持っておかなければいけないということです。

私はよく高校教師志望者に言います。「君が担当する教科の高校生が、分からない入試の問題を持ってきて質問したとして、君にはその問題を解いて解説してあげる自信がありますか?たとえ、それが東大の問題でも?」 私が質問しているのは、東大入試の受験指導ができるかということではありません。高校生が受ける大学、たとえそれが東大でも、の入試レベルで扱われる知識と教養を、あなたは高校教師として持っていますか?と言うことなのです。高校教師は、高校生が扱う知識くらいは持っていて当然です。

でも、現実は、多くの高校教師の知識と教養は、勉強をよくしている高校生の知識と教養を下回っているのではないでしょうか。

もちろん、圧倒的な知識と教養を持っている教師もいます。私の過去の教え子の中でも、圧倒的な知識と教養を持って教壇に立っている人も何人もいます。でも、教えている学校の生徒のその教科の知識レベルとあまり変わらない知識量で教壇に立っている人がいるのも事実です。

言うまでもなく、知識と教養だけでは、教師にはなれません。でも、知識と教養がなければ、教師にはなれません。そして、その知識と教養は、生徒と比べたときに、圧倒的なものでなければいけません。

圧倒的な知識と教養の中から、生徒の現状に合わせて、今日の授業では何を取り上げるか、何について話すかを選択するくらいの「知的余裕」が絶対に必要です。

知的余裕もなく、一夜漬けの生徒と同じレベルと量の知識だけで、教壇に立って授業をするのであれば、そのクラスで最も習熟度が高い生徒がその授業をするときと、知的にはほとんど何も変わらないでしょう。たとえ教師の方が、指導言や板書などの授業技術が上手かったとしても、授業は教師の漫談の場ではなく知的な活動の場なのですから、知的レベルにおいては、知識と教養のない教師の授業には、あまり大きな価値はないでしょう。

もちろん、時には、子どもの方がある分野についてものすごく詳しいこともあるでしょう。ただし、それは、あくまでも稀な例として、嬉しい驚きとともにその子どもを褒めてあげればいいでしょう。でも、いつも、教師が子どもたちから知識を授けてもらってばかりではダメです。

教師はプロなのですから、プロとしての知的余裕を持って、子どもを教えたいものです。

100を知って5か10くらいを教えるということを徹底してほしいですね。

では、また明日!!

広島教採塾
河野正夫

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