【川上貴裕】グローバルデザインの教室づくりを、紹介します!
- By: Kyousaijuku
- カテゴリー: 教育論
教採塾の川上です。
以前のブログで、「支援が要る子にとっては、必要なもの・助かるものであり、支援を要しない子にとっても、便利なもの。」を意識したグローバルデザインの教室作りについて少し紹介しました。
すると、取り上げてほしい話題・テーマで、「グローバルデザインの教室づくりはどんなことがあるか具体的に教えてほしい。(小学校)」とのご要望を受けましたので、今回のブログでは、私が教員時代に取り組んでいたグローバルデザインの教室づくりを、一部紹介していきます。
賛否両論はもちろんあると思いますが、共感するものがあれば、お試し下さい。
まず、私が意識していた最重要項目の教室環境作りとしては、効率的かつ安全に生活でき、また、動けるように動線を確保することというのが挙げられます。
従って、教室の構造や、学級の人数を念頭に置き、動線のイメージをひたすら考えることから4月が始まります。
動線の確保とは、給食後の歯磨き、絵具の水替え、他教室授業から帰ってきて、荷物をロッカーに収める際などに、
①取りやすい
②戻しやすい
③ぶつからない
を意識したものを意味します。
例えば、
給食後に、お盆やお皿を片付けて、そのままサッと歯磨きに行ける。
(食器を返すのが廊下や教室の前なのに、後ろの方に歯磨きセットを置いていたのでは、後ろから食器を下げに来る児童とぶつかったりします。)
また、絵具の水替えをする際は、ぶつかって怪我するのを予防、あるいは、ぶつかって水がこぼれ、拭く時間が生じることで、貴重な時間が削られてしまうことを防ぐために、行く際は前側の扉から、帰ってくるときは後側の扉からと、決めておく。
などが挙げられます。
動線の確保ができたら、今度は、いよいよ教室内&授業内の具体的な改造を始めます。
【教室環境】
・連絡黒板はマスキングテープ(以下、マステ)で配置・枠を作っておく。
マステ(かなり細身のタイプ)で枠を作っておくことで、咄嗟の際も、すぐに黒板内の空間・構成を変えることができます。
・両側の列の机は、教室中央を向くように少し斜めに。(あるいは、教卓前面が開けた状態での、コの字型方式。)
・「ノートの達人」
見本となる子のノートをコピーして貼っておくことで、他の児童も真似をして、綺麗に書けるようになったり、「自分も貼ってもらいたい!」と更にアイデアを出し、一目で分かる構造的なノート作りを競うようになります。
・時計は教室後方に設置。
休憩前は特に、時間が経つのが遅く感じますよね。
「残り何分。」と数えだすと、その時点で集中は切れますし、残り時間が苦痛になります。
・椅子や机の脚にはテニスボールを付ける。
・掃除後、元の位置に戻しやすいように、各机の位置に目印を貼っておく。
・ごみ収集の簡素化。
掃除後にごみを集める場所を、教室後方等に一カ所テープで囲み、作っておくと、ちりとりの係も楽に回収ができます。
・黒板上や黒板横には、極力、ものを貼らない。
貼るとしても、学校目標や、学年目標だけです。
・配慮が必要な子の席。
配慮が必要な子(ここではやんちゃ・落ち着きがない子も含む)の周りには、しっかりした子(規範となる子)をさりげなく散りばめておく。
席は、主に教室の半分より前の位置で。
・窓際近くの児童に対する配慮。
午後は西日が強く、反射して黒板が見えにくくなる構造だったため、太陽の位置を計算して、フィルムを貼ったりしました。
・雨の日セット。
雨の日は特にケガ人が多くなるので、廊下や教室を走り回ったりすることが無いように、1OO均などで、トランプやボードゲームを購入しておけば、読書があまり好きではない子でも、大人しく教室で過ごしてくれます。
・学級文庫も、毎月新作を増やしていく。
学級文庫って、古い本が多いですよね。
私も子供時代は、古い本が何故か嫌で、あまり読みませんでした。
なので、私費で大変な部分ではありますが、毎月書籍を購入して、増やしていきました。
子供たちも、新作を買って来る日を、毎月楽しみにしてくれていました。
・机と椅子に、それぞれ児童の名前磁石を貼っておく。
・役割分担表。
掃除当番、給食当番、係などの自分の役割は、札や磁石で割当表を作り、一目で全ての自分の役割が分かるよう枠を工夫して掲示しました。
役割が終わったものについては、札や磁石を裏返して貼ることで、終わったことが教師の目からも一目瞭然でした。
・禁止系の言葉は一切書かない、貼らない。
日本の学校現場では、「○○するな」、「○○禁止」など、禁止事項の表示が多く見られます。
禁止事項だけ記載し、抑制する感覚は、早く日本の現場から無くさなければいけないと考えます。
例えば、「ここに、ごみを捨てないで。」という表記も、「ごみ箱はあちら→」でいいと思います。
【授業環境】
・テレビとBluetooth。
図工など、見本となる子の手元を見せたい時のために、学校のテレビと学校使用専用に購入した(私費・私用には用いない)iPadをBluetoothでつなぎ、教師がiPadでその子の手元をテレビに映します。
(口で説明しても分からない児童もいるので、視覚支援で瞬時に理解を促すことができます。)
・廊下側の壁に考察の仕方を掲示。
いわゆる話型指導の掲示は、私は貼りませんでしたが、研究教科が理科でしたので、理科の考察・予想・結論の定義や、表現の仕方を貼っていました。
また、他の教科も、単元ごとの既習事項をその都度貼っていました。
・大きなデジタルタイマー設置。
「問題を解く時間、あと3分です!」というよりも、瞬時に見て分かるものを設置します。
声をかけることで集中が切れる子もいます。
本人のタイミングや流れで、タイマーを見る習慣がつけば、集中は切れません。
・提出物や宿題。
提出物や宿題は、班ごとのケースを用意し、朝はその中に提出させます。
そうすることで、教師側としても、誰が出していて出していないかが一目瞭然です。
あゆみや所見の項目にも、「忘れ物」の項目があると思いますので、振り返る際も便利です。
音楽や総合のファイルも同様に、班ごとのケースを作り、空きロッカーに収めておきます。
すると、班の中の係がそのケースを持ってくればいいだけなので、ファイル置き場が混みません。
・チョークの色を固定する。
白は普通の文字、黄色は重要語句、赤は下線や強調の囲み線、と最低限でかつ、分担を決めておきます。
(ただ、色覚の関係で極力赤は使わない。)
・司会進行カードの作成。
誰でもグループを回すことができるよう、グループワークの際の、司会進行の仕方のカードを準備しておきます。
・動画に収めておく。
彫刻刀の使い方、彫る手順、絵具の混ぜ方、重ね塗りの方法などは、全て教師側で予め動画を撮っておくと、これも説明や文字では理解が難しい子供にとっては、瞬間的な理解を促せます。
(どんな動画でも3分程度に編集。)
・グループワークは、基本的には、付箋を用いて行う。
付箋に考えや想いを書く方が、意見が出やすいです。
発表が苦手な子でも、楽しく参加していました。
・授業中、いつでも質問できるように授業を組み立てる。
・反応は教師主体で。
「いいです。」「分かりました」、と声をそろえて言わせて、意地悪な先生は、言っていなかった子をわざと当てて反応を見たりします。
で、答えられない子に対しては、「分からないなら、きちんと反応しないと!」と怒ります。
無駄な時間ですし、そんな公開処刑しなくても、と感じます。
私は、瞬時に全児童の表情や仕草から、分かったかどうかを判断できていたというのもありましたが、いつでも質問できる環境にしていましたし、質問が恥ずかしければ、近くの子に聞くのもよし、としていました。
どのみち、中高ではこんな反応の仕方をしないのに、なぜわざわざ小学校だけは、やらせるのかが未だによく理解できません。
もちろん、教師側の反応・声掛けの種類は、多く持っておく必要があります。
ただ、この方法を取っておくと、勝手に子供たちが「え、これってこうじゃないの?」「その意見に少しだけ付け加えたい。」と議論を始めてくれます。
まさに、「対話的な学び」を少し先取りしてやってくれていました(笑)
・クラスのアイコンやキャラクターを作る。
大事な語句や、ここは集中して聞いてほしい場面などで、その板書の近くに、ラミネートしたキャラクターを貼り付けます。
定着すると、個人個人でノートに囲みを作ったり、そのキャラクターと共に「ココ大事!」と記載してくれていました。
・100均のうちわの活用。
基本的に、私が受け持った子たちは、かなり好奇心も強く、授業も集中して聞いてくれていたので、使うことはほとんどありませんでしたが…。
「静かにしなさい。」と言い続けても、完全に静かになる前に、教師側が我慢できずに、授業を先に進めてしまったりすることもあってか、子供たちは慣れてしまい、聞かなくなります。
それよりも、うちわに「シーッ!」の似顔絵マークを貼っておいて挙げれば、挙げるだけで子供たちは、これが不思議と気付きます。
先ほどの机の配置もそうですが、常に教師に目が行くように仕向けます。
声だけだと、聞いてはいても、こちらを見ていないことも多いですからね。
意図的に向かせる仕組みを作ります。
さて、上記の事は、必ずしもメリットだけをもたらしてくれるものではありません。
「他のクラスと平等にして!」
「勝手なことしないで!」
「ネットやBluetoothを飛ばすとか、安全面は大丈夫なの?」
「基礎が大事なのに、そんな変則的なことを。」
とブツブツ言ってくる人もいるでしょう。
もちろん、協調性は大事です。
歩幅を合わせることも大切です。
でも、これらを続けたことによって、未だに子供たちからは、「川上先生のクラスが楽しかった。」と学校で話してくれているようです。
(おかげで、今の担任の先生は、かなり肩を落としているようですが・・・(笑))
この通りをした方がいい!ということでは、もちろんありません。
ただ、学校の主役は、子供たちです。
子供たちが快適で、安全で、楽しく過ごし、また学べるように、我々は環境を整えていく必要があります。
教室環境・授業環境を整えることは、もちろん教師側にも、大きな生産性をもたらします。
丸付けや、事務仕事に追われる時間も激減し、子供と過ごす時間がたくさん増えます。
ぜひ、皆さんも、ご自身と、その学級の子供たちの適性に合った教室環境・授業環境を整えてみて下さいね!
では、また来週!
教採塾
川上貴裕