「語り」を理論的に見つめ直してみよう!!

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今日は、「語り」を理論的に見つめ直してみよう!!というタイトルです。

教採対策では、面接での語り、小論文での語りなど、語る必要がある場面が多いですが、そもそも効果的で人を惹きつける語りとは何なのでしょうか。受験技術だけではない、語りの本質を考えてみましょう。

今日はいつもよりちょっとだけアカデミックに語ってみますね。語りの本質をコミュニケーション学的にレトリック論で考えてみましょう。ここでいうレトリックとは単なる言葉の修辞ではありません。アリストテレスがいうところの”art of persuasion” すなわち、説得する技法のことです。

コミュニケーションとは何か?と聞くと、多くの人は通常、「自分の気持ちを相手に伝えること」と答えます。でも、これはレトリック論から言えば、コミュニケーションの正しい定義ではありません。より正しい定義は、「メッセージを発信することにより、相手を自分の望む方向に動かすこと」となります。

例えば、私が誰かに「100万円貸してください。」、あるいは、「私と結婚してください。」と言うとします。どちらの場合も、私の気持ちは明確に相手に伝わりはするでしょう。でも、その人が100万円を貸してくれなかったり、結婚してくれなかったとしたら、私の意図したコミュニケーションは成立していません。

レトリックとは、自分のメッセージ発信によって(つまり自分が相手に伝える言葉で)、相手の心を動かし、自分の望む方向へ相手を動かすための技法です。レトリックがしっかりしていなければ、メッセージは、結局は独り言と同じ効果しかもたらしません。相手の心が動かない言葉は独り言と同じです。

これは教採の面接の場面を例として考えると、とてもよく分かります。面接官の質問を受けて、どんなに事実を正確に答えても、それで面接官が自分の望む方向に動かなければ、つまり、面接官があなたを採用しようという方向に動かなければ、あなたの面接での回答に意義はないということです。

とりあえず、何かをしゃべっておけば、面接官は部分点をくれるはずだ、なんて思っていたら大間違いです。あなたの言葉に面接官の感動と共感を勝ち取る力と魅力と響きがいるのです。それがレトリックです。

西洋では、アリストテレス、キケロ、クインティリアヌスと古代ギリシャ・古代ローマにさかのぼる2000年以上もの歴史と伝統があるこのレトリック論は日本では、研究者を除いてはあまり多くの人には知られていません。アメリカの大統領のスピーチライターなどはレトリック論を叩き込まれています。

今日は、レトリック論を興味深く学べる本を2冊ご紹介したいと思います。ただし、今日の本は入門書とは言いながら、内容はかなりハイレベルです。私はこれまで気楽に読めて楽しく学べる本を中心にご紹介する方なのですが、今日、ご紹介する本は、ちょっとだけ、知性と理性で読む必要があります。

しかし、この2冊の本をしっかり読めば、レトリックの本質が見えてくるでしょう。ただし、すぐに教採の面接で応用できるかどうかは分かりません。これらの本は学術的にも一定のレベルで書かれていますので、受験参考書としては使えないでしょう。でも、あなたの知的レベルを高めて語りの質を高めます。

国語の教師志望者でこれらの本の内容も理解せずに教壇に立つことは悲しいことだと、私は思います。また、英語の教師も西洋の語りの伝統も知らずして、英語を教えるのも残念なことだと思います。社会の先生もこれを読むと、独立宣言や人権宣言などの歴史的文書の雄弁さを分析的に理解できます。

さて、その2冊とは、まず1冊目が、『修辞的思考 論理でとらえきれないもの』 香西秀信著、 です。

この本は名著だからか、売り切れでなかなか入手が難しいかもしれません。中古はネットで買えますが、常に数千円以上もします。元々の定価は1560円なのに。それほど人気があるのでしょう。

でも、ほとんどの大学の図書館には所蔵してあるはずなので、是非、図書館で借りて読まれることをお奨めします。

『修辞的思考』の内容は、入門書とは言え、かなりのハイレベルで、この本に書かれていることが理解できれば、レトリック理論の基本的なことは分かります。シェークスピアの戯曲の語りの魅力も分かり、日本文学のレトリックの一部も分かってくるでしょう。また、西洋哲学の理解の一助にもなるでしょう。

もう1冊は、『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』 香西秀信著 です。(先程の本と同じ著者です。)  この本は先程の本よりは読みやすく、若干、私たちの日常生活からも理解しやすい内容です。ただし、内容のレベルそのものは決して低くはありません。

こちらの方は、比較的入手しやすく、在庫もかなりあるようです。価格も新品で700円台ととてもお手軽な良書です。

繰り返しておきますが、今日、ご紹介した2冊は、教採の受験用の本ではありませんし、これを読んだからと言って、すぐに面接の力が付くものでもありません。でも、あなたの知性を高め、教養を深め、語学と哲学と人間のコミュニケーションの本質の一端をしっかりと考え、理解するきっかけにはなります。

たまには、知性を磨く書物を紐解いてみてくださいね!!

では、また明日!!

広島教採塾
河野正夫

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